高梁市成羽(なりわ)町は岡山県中西部にある山あいの町。その中心部に、建築家・安藤忠雄氏の設計による、建物自体がアートの成羽町美術館があります。
成羽町美術館は成羽町出身の洋画家・児島虎次郎(1881-1929)の遺徳顕彰を目的に、昭和28年に県下初の町立美術館として開館しました。
この児島虎次郎。じつは前項vol.32で取り上げた大原美術館のコレクションの立役者。虎次郎は東京美術学校西洋画科選科に入学後、倉敷の大原孫三郎と出会い、大原家の奨学生となり生涯援助を受けることになります。
ヨーロッパに留学し、勉強のかたわら「日本の画学生のために」と西洋絵画の収集に奔走。モネ、マティス、ゴーギャンらの優れた絵画を持ち帰り、世界有数のコレクションへと結実させました。
成羽町美術館では、彼の初期の作品「登校」をはじめ、「紫苑と少女」「和服を着たベルギーの少女」「酒津の農夫」など、生涯を通しての代表作を見ることができます。
この人ありて、この業績あり。展示作の一点一点から、彼の才能と共に、美に対する真摯でひたむきな姿勢が伝わってきます。 |