トラクターやコンバインなど、今日の農業機械のルーツをたどっていくと、鍬や鎌などの道具類、自然の力を利用した水車などの装置、牛や馬などの家畜、最終的には人の手足にたどり着きます。
こうした能力は、現代から見れば、あまりに非力で未熟なレベルかもしれませんが、そこには、先人たちの知恵と工夫の跡をうかがうことができます。
農業先進県と言われる岡山県。各地で営々と取り組んできた農業の足跡を探訪します。
トラクターやコンバインなど、今日の農業機械のルーツをたどっていくと、鍬や鎌などの道具類、自然の力を利用した水車などの装置、牛や馬などの家畜、最終的には人の手足にたどり着きます。
こうした能力は、現代から見れば、あまりに非力で未熟なレベルかもしれませんが、そこには、先人たちの知恵と工夫の跡をうかがうことができます。
農業先進県と言われる岡山県。各地で営々と取り組んできた農業の足跡を探訪します。
岡山県浅口市鴨方町鴨方2244−13
TEL.0865-44-7055
休館日 | 毎週月曜日 |
開館時間 | 9:00-17:00 |
入館料 | 無料 |
浅口市立鴨方郷土資料館のある浅口市鴨方町は、岡山県の南西部に位置します。
鴨方町には国立岡山天体物理観測所があり、つまりこの地は、晴天が多く、湿度が低く、そして空気の澄んでいる土地柄。 こうした自然条件を生かして、この旧備中国エリアでは、地元産の小麦を使って「麦切」と称された麺が作られ続け、9世紀には朝廷にも献上されていた記録が残っています。
全国一の産地、兵庫の播州に引けを取らないほどの一大産地だったわけです。
浅口市立鴨方郷土資料館には、江戸時代後半から水車を建設して製麺業を行っていた様子が再現されています。
圧巻は大きなタンスのような形をした製粉装置。石臼のほか、水車大工の英知を結集した元掛機・のぼりがけ・八角・大じょうご等から構成されています。 これは、現代風に言えば、専用のプラント装置。
木で作られた大きな歯車と、精緻な機構を見ると、当時の大工さんの職人魂、チャレンジ精神をうかがうことができます。
この地には手延べそうめんと並ぶ、もう一つの特産品がありました。 それは麦稈真田(ばっかんさなだ)。
麦わらを原料に、手で編んだもので、農家の副業として明治から戦前にかけて盛んに作られていました。
製品は国内のほか、アメリカへも輸出されていましたが、戦後、生産奨励されたものの、消滅の運命をたどります。
農家で使われた仕事道具、装置はいたってシンプル。しかしここでも、木を使った、こだわりの精緻なメカニズムを観察することができます。 日本人って、昔から本当に器用で、より良い製品を作るためには、道具に工夫を惜しまない性分だったんだなあと感心させられる、貴重な道具の数々です。
昔の製造風景を再現
館内に入ってまず飛び込んでくるのがこのセット。江戸時代から伝わっている、水車を利用した製造機具です。大きな石臼、水車大工の英知を結集した元掛機、大じょうご等が連結しています。手延べ作業風景
手延べ製法とは、麺生地を切ることなく、ゆっくり熟成させながら徐々に長く延ばしていく製法のことです。水車を使った製粉装置
大きな石臼の上にあるのが、大じょうご。小麦を加水し、蒸したあと、この中に入れ、水車を動力にして粉にします。製粉循環じょうごの説明
昔の製造の様子
伝統の手延べそうめんづくりの工程を紹介したパネル。機械化されているのは、ごくわずかな部分だけ、というのがわかります。機械による作業
生産のピークは大正10年のころ。現代よりも多いのですから、わずかな機械装置は、それこそフル稼働で活躍したことでしょう。麦稈真田
麦わらを原料に手で編む麦稈真田。麦わら帽子やインテリ製品などに使われていました。農家での作業の様子
明治から戦前にかけて浅口郡の農家の副業として盛んに行われた麦稈真田の製造道具や製品等が、保存・展示されています。現代ではもう作られていませんので、貴重な民具資料といえます。木製の簡素な装置
原料の麦わらを揃えたり、切ったり、編んだりする装置も、すべて木製。よく観察すると、細やかなメカニズムが組み込まれているのがわかります。