自然が創り出す芸術には、到底、人智の及ばない美しさと神秘さ、意外性があります。
竹の一種である虎斑竹(トラフダケ)もそのひとつ。
不思議で、美しく、味わいのある紋様・・・。
そんな 自然が描く美に惹かれて、古くから虎斑竹は装飾品として珍重されてきました。
この黒い、まるで虎模様のような色の正体は、じつはカビ。
夜叉竹(やしゃだけ)という種類の竹に虎斑菌が寄生して、徐々にこの紋様は描かれていきます。
江戸時代から地域産品として乱伐を規制し、保存奨励した、という記録も残っています。
天然記念物ゆえに勝手な伐採はできませんので、いまとなってはこの竹製品は貴重。
筆軸や調度品などに好んで使われていた頃は、自然の織りなす柄と、手の技との調和に、粋人たちが心を遊ばせたことでしょう。身の回りの調度品に、機能だけでなく、深い趣や味わいを求めるのは、木や石、水など、あらゆる自然に神が宿ると信じる日本人ならではの感性ゆえでしょう。
今日も少しずつ、自然界の画人は、竹をキャンバスに気ままな紋様を描いています。
自生地。大切に保護されています。
|
まだ青い状態 |