過去のおいんでんせえ
バックナンバー:第五幕『岡山のお祭り』
備中高梁松山踊り(高梁市) 開催時期/8月14・15・16日

ちょっとこの歌詞をご一読ください。

備中高梁松山踊り 月の絵になるお城の矢場で
ちょいと小粋な姉さん冠り かけたたすきは夜目にも紅い
差す手引く手に化粧がかおる くるり廻れば月影おどる
・・・(略)・・・
金の苦労も浮き世の義理も 今宵ばかりは空吹く風よ
おどりひとつも踊れぬ野暮に 明日の果報が廻って来ようか

これは岡山を代表する盆踊り「備中たかはし松山踊り」の歌詞です。なんとも艶っぽくて、ウィットに富み、庶民のたくましさ、おおらかさを小粋に歌っていることでしょう。きっと、この地ゆかりの精霊たちも、毎夏恒例のこの踊りの輪を子孫たちと共に楽しみ、浄土へと帰っていくことでしょう。
輪になって踊る「地踊り」。格式高い踊りの「仕組み踊り」。テンポの速い「ヤトサ」。これら三つの踊りがお盆の夜に高梁駅前通を舞台に繰り広げられます。
ところで、現代を忙しく生きる我々に、ちょっと痛いところを突いてくるのが最後の一節。
おどりひとつも踊れぬ野暮に 明日の果報が廻って来ようか
うーん。思えば我々の周辺には、いかに仕事一辺倒の野暮な連中が多いことか。
正直、私たち自身も間違いなくこの部類に入ってしまうのですが・・・。
この踊りが生まれた江戸時代は、こうした踊りや酒宴は心を開放する数少ない一大イベント。心身のリフレッシュのとき。お伊勢参りや金比羅参りなどの長旅は、せめて一生のうちに一度でいいから実現させたい夢そのものでした。
現代でいう「踊り」は、さしずめ「有意義に過ごすオフタイム」と訳すことができるかと思います。「オフタイムひとつ料理できぬ野暮に 明日の元気が湧いてこようか」。好景気、不景気に一喜一憂し、大きな波を近年何度となくかいくぐってきた我々ですが、波間に翻弄されない意気軒昂な遊び心をしっかりと持ち続けたいものです。