過去のおいんでんせえ
バックナンバー:第五幕『岡山のお祭り』
布施神社のお田植祭(鏡野町) 開催時期/5月5日

唐突ですが日本の食料自給率はどのくらいかご存じですか。50%くらい?いえいえ、さらにそれを下回る約40%。毎日の食卓に上る食材の半数以上を輸入食材に頼るという、世界でも最低クラスの自給力。肉や魚、加工品や野菜はもとより、和食材の豆腐や納豆でさえ、原料の大豆はほとんどが輸入品。国産食材で十分自足できるのはお米ぐらいといわれています。
今回ご紹介する布施神社のお田植祭。800年もの歴史があります。そんな大昔の時代からほんの数十年前まで、食材は自国内でまかなうのが当たり前であり、収穫できた自然の恵みを八百万(やおよろず)の神々に感謝するのは、長い歴史の中で培われたごく自然の精神風土でした。
このお祭りには獅子練りのほか「荒起こし」「しろかき」「くわじろ」「田植え」といった稲作の一連の工程を神様の前でユーモラスに演じます。最近は機械化が進んだために、農村地帯でさえ一年の農作業の流れを目にしなくなりました。
我々製造業の現場においては、こうした完成品が出来上がるまでの一連の工程を全員が知ることはとても大切な意味を持っています。各自が担当する工程にはおのずと存在理由があり、それぞれにベストを尽くさなければならない必然性が潜んでおり、それをいくつも連結することで完全な製品へと仕上がっていくのです。籾まきから始まる米作りの工程と同じことです。
笑いを誘うユニークで面白い祭りですが、忘れかけている食の根幹問題、そして、ものづくりの堅実な営みの大切さを、800年の時を超えて教えてくれているかのようです。(県指定重要無形民俗文化財)