過去のおいんでんせえ
バックナンバー:第五幕『岡山のお祭り』
 備中神楽(岡山県西部) 開催時期/夏祭、秋祭、正月など

郷土の伝統芸能。その素晴らしさは、名もない一般の市井の人から人へ、営々と何百年にもわたって受け継がれてきた、土着ならではの生命力です。山陽山陰の各地では郷土芸能としての神楽を見ることができますが、ここ岡山県を代表する神楽といえば、備中(びっちゅう)神楽。岡山県西部の備中地方一円で、秋祭りや正月に欠かせないものとして、いまも広く親しまれています。そしてこの備中神楽がすばらしいのは、観客の目を楽しませる演目自体もさるものながら、各地で子供神楽のグループが結成され、伝統の伝授が、ごく自然に、普段着感覚で行われていること。
一方、視点を変えて、我々の<ものづくりの世界>はどうでしょう。あらゆる産業の生産現場で、熟練の技や経験の伝授がうまくなされているでしょうか。団塊の世代のベテラン技術者、職人たちが、もうすぐ迎える定年退職というひとつの区切りによって、現場から否応なく切り離されようとしている現実を目の当たりにします。
このような日本のものづくり現場の現実を憂慮し、いまや世界語となった「もったいない」ことだとばかり、海外の企業が手を挙げ、現地の若手技術者育成に定年退職したベテラン技術者たちを招聘したという例を、アジア各国で数多く耳にします。
伝統芸能で受け継がれていくのは、技や形式ばかりではありません。その内なるエネルギッシュさこそ神髄です。ものづくりニッポンを支えてきたよき伝承、情熱を、今一度復活させたいと願うのは、私たちばかりではないと思います。