過去のおいんでんせえ
バックナンバー:第四幕『岡山の郷土品』
 い草(いぐさ)製品

かつてのJR宇野線。現在はJR瀬戸大橋線として本州と四国を結ぶ線です。岡山駅を出発すると、ほどなく、広い平野部の真ん中を走るように列車は進みます。じつはこのあたり、夏場には、まさに「青々とした」という表現がふさわしい、い草田が一面に広がっておりました。かつて岡山県は、い草(畳表やござの材料ですね)の一大生産地だったのです。
それがやがて九州地方がい草生産地として台頭。現在でも岡山県にはい草製品を扱う会社は数多くあるものの、国内で流通しているい草製品のそのほとんどは、岡山産でもなく、九州産でもなく、いまや中国産品に取って代わられているのです。
確かに、真冬の酷寒の季節の苗の植え付け、真夏の炎天下での刈り取り作業と、過酷な労働ゆえに担い手は少なく、労働力豊富な中国に生産シフトされていったのは時代の避けられない流れなのでしょう。
現在、岡山県で生産されているい草はほんのわずか。茶室などで使われる高級品などに限られています。
ところで当社も2002年9月から中国・上海に生産拠点を設けて、トラクターやコンバインなど農業機械をはじめとした各種の機械部品を現地生産、現地供給しています。
残された選択肢として中国に目を向けざるを得ない産業がある一方で、中国という巨大な市場を積極的に取り込もうという進出も変わらぬ勢いで続いています。
同じ中国の地を舞台に、岡山の地場産業も多様に変貌を遂げている現実を、この、素朴でかわいいい草製品を手にして、しみじみと想うのです。