過去のおいんでんせえ
バックナンバー:第四幕『岡山の郷土品』
 倉敷ガラス

ガラス工芸品で名高いところが全国にいくつかあります。小樽、長浜、沖縄・・・etc。それらの産地ガラスと、「倉敷ガラス」とはずいぶん実情が違っています。というのは、今から約40年ほど前、小谷真三さんというたったひとりの地元の人が窯を築いて、日常使うコップや皿などを作るようになってから徐々に知られるようになり、現在は息子さんと二人で、コツコツ手作りされている吹きガラスの名称が「倉敷ガラス」。けっして、倉敷が一大産地とか、倉敷ガラスの名の下に、たくさんのガラス職人がいるというわけではないのです。
なんとも言えぬやわらかな透明感に満ち、吹きガラス独特の、ひとつひとつ表情の異なるほどよいゆがみ感が、この倉敷ガラスならではの味わい。
小谷さんがガラスを吹き始めてまだ間もない頃、日本の民芸運動に大きな足跡をの残した、かのバーナード・リーチ氏が、彼の作品を見て「いやしくなく、気品があって、しごくあたりまえにできていて、たいへんよろしい」と評価したそうです。「たいへんよろしい」・・・。作り手にとっては、なんとも元気のわく、激励の言葉でしょう。その言葉を励みに精進され、今では世界的な工芸作家として作品を作り続けるとともに、倉敷芸術科学大学芸術学部の教授として、若きガラス工芸作家の育成に取り組んでおられます。
思えば私たちがこうして仕事を続けているのも、お客様からいただく評価や期待、また、声なき信頼が励みになっているからこそです。日々是精進。モノづくりに携わる者は、こうでなくてはなりません。