過去のおいんでんせえ
バックナンバー:第四幕『岡山の郷土品』
 白桃

果物王国、岡山。岡山県は瀬戸内海と中国山脈に囲まれ、自然災害が少ないことから「晴れの国」と謳っています。温暖な気候と肥沃な大地を生かし、さまざまな果物が生産されています。その中でも、岡山の果物の代表といえば、桃。ことに白桃は、果肉のとろけるような柔らかさと極上の甘さがマッチし、ほかの果物にはない特別な深い味わい。いいものだと1玉1,000円以上もしますが、夏のほんの一時期にしか味わえない、極上の味覚を是非、知っていただきたいものです。
ところで、あまり知られていないことですが、桃栽培はじつはとても手のかかるものなのです。普段から桃の木を大切に扱い、春先には、それはそれは丁寧に、一本の雑草も見あたらないほどに入念に、桃の木の下草刈りを行って開花の時を待ちます。桃源郷とはかくなる風景のことかと思わせるような、山肌全体ををピンクに染める開花期を迎えると、間引きのための花摘み、脚立に立って一花ごとの人工授粉、さらに間引きしての袋かけ。手間を惜しまず、桃栽培はまさに、『人事を尽くして天命を待つ』取り組みそのものです。
我々モノづくりに携わる者として、よりよいものを作ろうとする一途な心意気に相通じるものを強く感じます。丹精と、不断の努力に対する成果としての、まさに、果実。我々が、大型マシンから工具に至るまで、日々、愛着を持って取り扱うように、農家の人々も、無事収穫の終わった桃の木に「今年もご苦労さん。ありがとな」と声をかけて、岡山の盛夏は過ぎてゆくのです。