過去のおいんでんせえ
バックナンバー:第三幕『岡山の美術館・博物館』
井原市立田中(でんちゅう)美術館
近代彫刻界の巨匠・平櫛田中の作品を保存展示。3階には、田中が数々の名作をつくり出した東京上野桜木町のアトリエを再現しています。

 
岡山県井原市井原町315
TEL. 0866-62-8787

「いまやらねば・・・」と、年老いてなお、あふれる創作意欲で近代木彫界の巨匠となった平櫛田中(ひらくしでんちゅう)。1872年に井原市に生まれ、90年にもわたる創作活動の中で、日本の伝統的な木彫と西洋彫塑のリアリズムを融合させた独自の彫刻世界を築きあげました。
特筆すべきは、その芸術性の高さはもちろんのこと、108歳で大往生を遂げるまで、まるで青年そのままの創作意欲を失わなかったこと。名声に甘んじることなく、迷わず、まっすぐに己の道を歩み続けようとする、ひたむきな生きざま。館内には圧倒的な迫力で迎える田中の代表作「試作鏡獅子」「尋牛」「活人箭(せん)」などの作品群。美術、芸術といった枠組みを超えて、見る人にほとばしるほどの生命力を感じさせるのは、一刻一刻、魂を込めた創作活動ゆえの成せる技でしょうか。
「いまやらねば・・・」。作品と対峙するとき、見る人に「いま」を真剣に生きることの大切さを、語りかけてくるかのようです。