有名な「涙で描いたネズミ」の逸話
井山宝福寺(総社市井尻野)
雪舟は、日本の絵画史上において別格の扱いを受けている水墨画家です。現存する作品のうち、6点までもが国宝に指定されていることからも、彼の作品の絵画的、歴史的価値の高さをうかがえます。
ところで、雪舟といえば、有名な「涙で描いたネズミ」のお話。
宝福寺(総社市)に入った幼い日の雪舟が、絵ばかり好んで経を読もうとしないので、寺の僧は雪舟を仏堂の柱にしばりつけた。こぼれた涙を足の親指につけ、床に鼠を描いたところ、ネズミが動き出した・・・(あるいは、僧はその見事さに感心し、雪舟が絵を描くことを許した)というもの。
じつは、これは江戸時代になって、彼を崇拝するあまり狩野永納が創作したという説があります。
ともあれ、彼を神格化させるほどの人気と、その後の画壇における彼の影響力がいかに大きかったかを物語る証といえるでしょう。
雪舟作?の庭園もおすすめです
常栄寺雪舟庭
雪舟は応永27年(1420年)、現在の岡山県総社市に生まれます。10歳の頃、京都に移り、禅の修行を積みます。
ちなみに、水墨画は禅とともに起こった芸術であり、描くことは禅の修行でもあったのです。
応仁2年(1468年)、遣明船で明へ渡航。各地を廻り、約2年間本格的な水墨画に触れ、研究の旅を続けます。そして「風景こそ最大の師」と悟り、各地の風景を写生したのでした。
また雪舟は造園においても数々の足跡を残しています(あくまで伝説ですが)。近くでは、山口県山口市にある常栄寺。枯山水を用いた池泉回遊式庭園で、ここでは雄大な庭園美を、心ゆくまで堪能することができます。縁側に腰を下ろして眺めれば、まるで雪舟が描く生の山水画と対面しているような気持ちにさせてくれます(これはホント)。心落ち着かせてくれる、おすすめスポットです。ぜひぜひ。
雪舟(せっしゅう)1420- 1506?年)
室町時代に活動した水墨画家・禅僧。備中(現在の総社市)生まれ。京都相国寺で修行した後、周防に移り、その後、中国(明)に渡り、画法を学ぶ。日本独自の水墨画風を確立し、肖像画も残している。