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バックナンバー:第十二幕『岡山の先駆者たち2』
坪田 譲治

売れない小説家から、人気童話作家へ


坪田譲治文学碑 坪田譲治文学碑
坪田譲治の文学的出発は、早稲田大学文科予科へ入学し、小説家であり児童文学作家であった小川未明と出会ってから。大学卒業後、同人誌を発刊し、文学者としての第一歩を踏み出します。以後、鈴木三重吉主宰の童話雑誌「赤い鳥」などに作品を発表しますが、長く困窮生活を余儀なくされます。
転機となったのは、昭和10年。山本有三の紹介で『お化けの世界』を雑誌「改造」に発表。これが好評をもって迎えられ、ようやく世間に認められるようになります。そして翌年、新聞小説として連載した『風の中の子供』が高い人気を得て、一躍人気作家となったのでした。いずれも善太・三平を主人公にした、郷土岡山を舞台とした家庭小説で、大人も子どもも共有できる小説として親しまれたのでした。

坪田譲治文学賞


坪田譲治文学賞は、1984年に岡山市が制定した文学賞。岡山市名誉市民の坪田譲治の業績を称えると共に、創作活動の奨励に創設されました。
一年間に刊行された文学作品の中から<大人も子どもも共有できる優れた作品>一作品を選出。なお、選考委員は、五木寛之、川村湊、高井有一、竹西寛子、西本鶏介、森詠の各氏。これまでの受賞作品は、2012年時点で28作品となっています。
ここ10年の受賞作は以下の通り。
第19回(2003年)- 長谷川摂子 「人形の旅立ち」
第20回(2004年)- 那須田淳 「ペーターという名のオオカミ」
第21回(2005年)- 伊藤たかみ 「ぎぶそん」
第22回(2006年)- 関口尚 「空をつかむまで」
第23回(2007年)- 椰月美智子「しずかな日々」
第24回(2008年)- 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
第25回(2009年)- 濱野京子「トーキョー・クロスロード」
第26回(2010年)- 佐川光晴「おれのおばさん」

プロフィール
坪田譲治 つぼた じょうじ
大正-昭和時代の小説家、児童文学者(1890−1982)。 小川未明に師事。小説《正太の馬》などを発表する一方、「赤い鳥」に「河童(かっぱ)の話」「善太と三平」などの童話を執筆。昭和38年、童話雑誌「びわの実学校」を創刊。作品に「お化けの世界」「子供の四季」「鶴の恩がへし」など。