四国を結ぶJR瀬戸大橋線・児島駅に降り立つと、周辺には広い平地が広がります。じつはこのあたり一帯は、かつて塩田があったところ。塩田、すなわち、海を干拓し、海水を引き込み、入浜式などの方法によって塩を作っていました。その塩田によって、一代で財をなしたのが「塩田王」と呼ばれた野崎武左衛門(ぶざえもん)。野崎家旧宅は、野崎武左衛門によって江戸後期に建てられた敷地1万平方メートルもの大屋敷です。建築技術の粋を集めて作られた建物・庭園は、当時そのままに保存されており、岡山県指定史跡。建ち並ぶ土蔵群のうちの2棟は、塩業歴史館として貴重な資料が公開されています。敷地内には5つの茶室があり、枯山水の庭園は四季それぞれの移ろいが楽しめます。一大事業を成し遂げ、しばしの休息を楽しんだであろう武左衛門よろしく、縁側にどっかりと腰を下ろし、木々や庭石を愛で、心の結び目をときほどいてはいかがでしょう。 |