瀬戸内市牛窓町。「日本のエーゲ海」をキャッチフレーズにする岡山県の観光スポットです。オリーブ園があったり、多島美を楽しめたり、ペンションやヨットハーバーがあったりしますが、今回行くのは、その牛窓町にある周囲10キロほどの前島です。
前島は、牛窓港フェリー乗り場のすぐ対岸に見え、乗船時間はわずか5分という近さ。運賃は大人往復で240円という手軽さです。訪れたのは5月の大型連休最終日。オリーブ園などはそれなりの人出で賑わっていましたが、前島に渡る人はわずか。のんびり楽しむにはいい島です。
じつは、前島を含む牛窓エリアは県下有数の野菜産地。特にこのあたりは、キャベツ畑とカボチャ畑が広がります。これら野菜類。食品栄養学的にも、癒やし効果があるのはご存じの通り。それに、野菜と弊社・淵本重工業は、ごく近い関係。じつは当社は各種機械部品を製作していますが、世界的な農業機械メーカーを納入先に持ち、大小さまざまな農業機械に、当社が作る機械部品が組み込まれているのです。
島に渡って、すぐ目につくのが野菜畑。一面に広がるグリーンは、鮮やかで、目に優しい。道路伝いに、ぐるっと島一周してみるとしましょう。
島は東側と西側それぞれに周回できるようになっており、東側はサイクリングコース、ハイキングコースとなっています。といっても、大型連休中でありながら、人影はまばら。出会うのは、野菜を収穫して運ぶ軽トラックと、レンタル自転車に乗った数組の家族連れ程度。
歩き始めて、すぐ気がついたのが、「街の騒音」がまったく聞こえないこと。聞こえてくるのは、ウグイスをはじめとした元気な野鳥の声と、ゆったり押しては返す波の音のみ。ああ、いい気分。スタスタ歩きます。海岸では釣りを楽しんでいる人の姿も。
続いて西の周回コースへ。こちらはもう、野菜畑だらけ。収穫前の野菜は、スーパーに並んだきれいな野菜よりも、さらにおいしそうに感じられます。ちなみに、帰りにフェリー待合所の中を覗いてみると、キャベツ一玉100円で売られておりました。
ほどよい疲れを感じた身体に、潮風が心地いい。波止場近くで潮干狩りをする人を眺めつつ、帰りのフェリーを待ちます。ここから眺める夕日もおすすめだそうです。
ところで農業ですが、日本が高度成長期にさしかかった頃から、農業は徐々に隅に追いやられる立場となりました。結果、食の自給率が年々下がり、農業従事者・後継者の不足、高齢化問題、田畑の耕作放棄等々、まるで希望の持てない斜陽産業のように思われてきました。
しかし、TPP時代に入って、農業は新たな局面を迎えます。厳しさもありますが、明るい期待も見え始めています。日本ならではの食の安全性とクォリティ。これを武器に、世界を相手に新たな活路を開拓して欲しいものです。
すでにグローバル化と直面しながら仕事をしている我々ですが、新たな展開を迎えた日本の農業を、当社も関わる各種の農業機械が力強く後押しする。結果、日本の農業が活力を取り戻し、ひいては国全体が豊かに成長していく・・・。産業分野は違えど、お互いに補完しあい、手を携えて進むwin-winの構図こそ理想の姿ではなかろうかと、生命力いっぱいに蔓を伸ばそうとするカボチャの姿を見て感じたのでした。
食は尊い。健康を支えるのは、やはり、健康な食。その食に、間接的ながら関わっている自分たちの仕事に、自尊心まで気づかせてくれた前島歩きでした。
たった5分のフェリー乗船で味わえる、非日常のウォーキング。おすすめです。